+++たいちょうかんさつ日記 ■番外編■ +++



交換日記!? (2)   ++ 嶋本から返事が来た ++


「おはようございます、隊長。…コレ、書いてきました」

朝出勤したらすでに隊長は出勤してはってたから、まだ人目もそんなにない事やし、こっそりと日報を渡しにいった。
流石にあの赤い表紙のまま渡すのはめっちゃ恥かしいモンがあるし、万が一誰かに渡す所を目撃されたら喰いつかれる事間違いなしやから、見られても特に違和感ないようにB5の茶封筒に入れて持ってきた。

日報て、あの昨日から強制的に始まった「交換業務日報」の事な。
隊長からの内容的にあやうく「交換日記」て認識しそうになったけど、あれは日報やねん!隊長がどんな日報書いてこようとアレは日報やねん!
俺までその認識を間違ってもたらエライ事になってまうわ。
大の男が二人して乙女日記帳で交換日記♪
…ありえへん!だから見た目は日記帳を使用してても、これは業務日報だという事を忘れんようにせんとな。

「ああ、分かった。そこへ置いておいてくれ」  カチャカチャカチャ…
「はい」
で、隊長の元に行ったらなにやらPCで書類を作っているようで、俺の言葉を聞いて一瞬チラッとこっちを向いたけどすぐまたPCに視線を戻して書類の続きを打ち始めた。
朝から書類作成って、今日中に提出しなアカン書類なんかな?

しかし、隊長が真剣に仕事してる姿ってかっこいいよな。
こうして言葉数少なく、黙々と仕事してたらホンマかっこええねん。
たとえ、足元はスリッパ脱いだ靴下状態でイスのキャスターの所に足を置いてたとしても、時々その足をブラブラしてたとしても、ホンマ絵になるねん!
天然スイッチさえ入らんかったらホンマにかっこええねんから!!
スイッチ入った時の隊長は、正直言ってあれは別人やな。
もしかして隊長二重人格…?
それか隊長実は双子やとか?
『仕事の出来るかっこええ隊長A』と『天然隊長B』が、誰に気付かれる事なく入れ替わり立ち替わり一人の隊長を演じて… 
ブッ!!ありえへん。
けどまさにそんな勢いで人格変わってまうもんな。じゃあ今『隊長A』が仕事してるとして、『天然隊長B』は何処にこっそり隠れとるんや??ブフッ

って、アホな妄想して一人で笑ってもたわ。
しかもありえへんのに天然隊長Bはどこや?と事務室内をキョロキョロと見回してもたし。

っていうか俺まだ出勤してきたままで着替えてへんわ!こんな事しとられん!はよ着替えに行ってこな!
と、きびすを返して事務室を出て更衣室に向おうとした時、ちらっと隊長を見ると、書類作り完成したのか、俺が先ほど渡した日記帳入りのB5の茶封筒を手にとって立ち上がろうとしてた。



  +++++




「嶋本っ!嶋本はいるかっ!」

  バターーンッ!

盛大な声と音と共に更衣室の扉が開け放たれ、真田隊長が現れた。

「…はぁ、俺ならココにいますが」
何かあったんか?隊長エライ勢いや…。余りの勢いのよさに驚く事も忘れてもた。
出動要請の放送はなってへんし、朝の業務引継ぎ開始時間まではまだあるはずやし…

  ズカズカズカッ!

「嶋本!コレは何だ!?」

・・・コレ?隊長の手にはあの赤い日記帳がしっかりと握りしめられてた。
そしてガシッっと両肩をつかまれた。ロッカーに背を押し付けられる感じで、後ろはロッカー、前には隊長、逃げる事は・・・無理っぽい。
一体何の騒ぎだ?と同じく更衣室で着替えをしていた何人かいたであろう隊員達も、俺たちの、っていうか隊長のただならぬご登場に何だ何だと注目し始めた。

「って、隊長!もう読んだんですか!?」
早っ!!俺が更衣室に上がってきて着替えをしてる間にもう読んだというのか!しかも俺まだ着替え途中やし…
Tシャツ…首に通した所で隊長が現れたもんやから腕も通さず上半身裸でTシャツを首に引っ掛けてるだけというかなり無様な状態なんですけど…

「ああ。だからコレは何だと聞いている」

…Tシャツにとりあえず腕だけでも通させてもらえる…雰囲気でもなさそうや。

「…何だ、って…最初に言われた通り交換業務日報ですが…」
すごい剣幕の隊長に無様な格好のまま答える。

「俺は、こんなモノを求めてはいないっ!」

昨日隊長からの「日報」とは名ばかりの「日記」を拝読し、確かに隊長は俺にもああゆう「日記」的内容を期待してるんだろうな〜〜と感じたけど、俺にはあんなの書けませんっ!それこそラブラブ交換日記になってまう!恥かしすぎるっちゅーねん!
というわけで、今日隊長が俺からの日報を読んだら、遅かれ早かれ期待はずれな内容にガックリされるかも…って思ったけど、俺は「交換業務日報」という主旨を貫いて、昨日のヒヨコの訓練報告と各ヒヨコ達の成長状況を事細かく報告しておいたのだ。

そして予想通り、いや予想以上にその内容は隊長のお気に召さなかったようだ。

「…スンマセン」
業務日報という主旨を考えると間違った事は決して書いてないはずやのに、何で怒られなアカンのや…と思ったけど、とりあえず隊長の期待に添えなかった事に謝っておいた。

「俺はヒヨコの報告なんてどうでもいいんだ!」

うわっ!言ってもた!隊長、それ思ってても口に出さんといてください。

「嶋本ならわかってくれると思っていたのに…」
 
はぁ、めっちゃ隊長の期待してた事はわかってましたが、俺にはあんな日記無理です。
せっかく隊長が提案してくれたのに申し訳ない思いますが、書けません。



「あの、…隊長。お取り込み中申し訳ありませんが、そろそろ引継ぎが始まりますので」

俺の隣で着替えてた高峰さんが、着替えも終わり、見るに見かねて助け船を出してくれた。
助かった〜〜
っていうかちらっと壁に掛かってる時計を見ると、ホンマにあと2分くらいで引継ぎ開始時間になってもてた。俺まだ着替え終了してへんし!

「・・・ああ、わかった。」
そういうと、隊長は俺の肩からやっと手を離し、結構あっさりと日記を持ったまま更衣室を出て行ってしまった。
何か隊長の後姿がいつもより小さく見えたのは気のせい?
そして隊長にずっと掴まれっぱなしだった俺の両肩にはくっきりと赤く隊長の手形がついていた。


「嶋…大丈夫?」
「あ、はい」
「大変だったね。盗み聞きしたような形になって申し訳ないけど、大体想像はついたよ。隊長はホント嶋の事大好きだからね〜〜多目に見てやってね」
「すっ、好きて!?」
「気付いてなかったの?隊長の「嶋好き」はもう基地内で有名だよ。」
まっ、マジですか…(汗)

高峰さんの助け船のおかげで何とかギリギリ引継ぎにも間に合った。、
しかし今日はヒヨコの訓練はなく、久しぶりに隊長と一緒に三隊業務に付けたというのに、朝の一件のせいで隊長に話し掛ける事も出来ずギクシャクした一日になってもた。

そして俺と隊長の「交換業務日記」の事は、
あの時更衣室に偶然居合わせた隊員達のとても迅速な伝言ゲームのおかげで、たった一日にして全隊員に知られる事となった。
しかもその伝言ゲームで広まった内容は…

「三隊の真田隊長と嶋本副隊長は交換日記をしてるらしい。しかもその日記で嶋本副隊長の方から真田隊長に別れ話を持ちかけたみたいで、それを見た真田隊長が逆上して朝更衣室で人目をはばかる事なく嶋本副隊長を襲ったとか…」

って、付き合ってもなけりゃ、別れてもないからっ!
それに襲われてなんてないからっ!!
お前ら伝言ゲームぐらいちゃんと伝えられんのか! っていうか広めるなっ!!

そこ!石井!!

泣くなっ!信じるなっ!そんな目で俺を見るなっ!

もう、泣きたいのは俺の方や!!

NO.2


今回で交換日記がみんなにバレてしまいました。しかもエライ伝わり方で。始まって2日目にして…早っ!
隊長は誰にバレようが気にしませんが、嶋本は一応人として気にしまくります。
ラストに絵美ちゃんのリクエストでメグを出してみました。(これだけかよっ!てへっ)
っていうかなんとも二人の間が中途半端なまま終わってすみません。今後日記は続くのか…(とりあえず今、日記は隊長の元にあります)

リクエストから始まりました「交換日記」ですが、事のほか皆様に楽しんで頂けた様でとても嬉しかったです。天然暴走隊長…私は好きなんですが、皆様も相当お好きで安心致しました。皆様の素敵な萌えメッセを拝見してると、もっと隊長を暴走させていいんだと(間違った)自信がつきました!ありがとうございますっ!
交換日記の続きをとの嬉しいお声をたくさん頂き、私自身も続きが気になっていたのですが、お題を下さった方に無断で続きを展開するのも失礼な話だから諦めるか…と思っておりました所、嬉しくもお題くださった方が名乗り出て下さいました。そして続きを書く許可も頂けました。しかも私の好きにどんどん暴走させちゃっていいと!(ありがとうございますっ!八朔様っ!期待を裏切らないよう暴走しまくりますっ!笑)
という訳で「たいちょうかんさつ日記」形式ではありますが、あれとはまた別世界の番外編という事で、「交換日記」シリーズは完結させたいと思います。こちらの世界にはヒヨコ達も出てきます。どこで完結なのか…それが一番の謎ではありますが。とりあえず隊長にはヒヨコ隊の訓練に紛れ込んで欲しいのでそこまでは続けたいな〜と。稚拙文しか書けず申し訳ありませんがまたお付き合い頂けると光栄です。





モドル