+++たいちょうかんさつ日記+++



満員電車


今日は隊長と一緒に霞ヶ関の海上保安庁の方まで所用で出かけてきた。
時間帯的にちょうど運悪いことに通勤ラッシュにあたってもて、モノレールから山手線乗りかえたらホンマ地獄やった。
ようテレビで駅員がドアしまらへんから人を物みたいにギューギュー押し込むって映像あるやん。まさにあの状態やってん。

普段レスキューでは小柄が武器になったりするから、トッキュー入ってからは自分の背を気にする事も少なくなったけど、こういう時はアカンな。
身長がホンマ欲しい思たわ。
新鮮な空気が循環してこーへんねん!頭一つ分下なもんやから周りはムカつくくらい壁!壁!壁!身動きとれへんし酸素少ないし。たかだか駅2つ分の辛抱やったけど酸素不足で目の前チカチカしてきた。

「シマ、大丈夫か?」
頭の上から隊長の声が降ってきた。
隊長も共にラッシュでもまれ中やけど、長身で新鮮な空気吸える分、余裕がある感じの声やった。
「ハイ、何とか。」
かなりクラクラきて限界っぽかったけど、男としてここでギブするのは恥ずかしい!耐えてみせるぞ!と何とか気力で乗り切ろうとしてたらまた隊長の声が上から降ってきた。

「シマ、大丈夫か。酸素足りてないようだぞ。」
ご心配ありがとうございます…って言おうとしたら

「シュノーケル持って来てるぞ。使うか?」

はぁっ!?

そう言うとギュウギュウ満員できついのに隊長はもそもそと自分の鞄を手元に引っ張りあげてきた。

!! 何でそんなモン持ち歩いてるんですか!
っていうか、満員電車でシュノーケルて…めっちゃおかしいしありえへんですって!!
しかもシュノーケル使こて上のほうの酸素を吸えばいいって事ですか!?そんな事誰もせえへんし考えへんて!日本で初めての試み、いやもしかしたら世界で初の試みで危うくギネスブックに載ってまう所や!

「いや!隊長!もうすぐ着きますし、俺大丈夫ですから!」
鞄から半分出かけた(ホンマに持ってたんや)シュノーケルを必死に隊長の鞄の中に押し込めながら丁重にお断り申し上げた。

そうこうしてるうちにやっと有楽町駅に着いた。電車から勢いよく押し出されるように降りた瞬間、思いっきり新しい空気を吸い込んだ。

 『 酸素ってこんなにうまかったんや〜〜 』

なんちゅう感想や。
毎日山手線ラッシュを味わわなあかんリーマン職じゃなくてよかった〜って心の底から思ったわ。
とりあえず危険区域からは脱出できた。
山手線から地下鉄に乗り換えて最寄りまで行く事もできるけど歩けん距離でもなかったからまだ時間もあることやし隊長と健康の為にも歩いて行く事にした。

でもその時も隊長は
「シマ、遠慮はするな。帰りは使った方がいいぞ。」とまた鞄からチラリて例のブツを。

だからいりませんて!
ってか帰りはラッシュ時間終わってるやろから先ほどみたいな満員にはなりません!
再び丁重にお断りしたら

「そうか…」
とちょっと隊長寂しげやった。

もしかして隊長、満員電車で俺がこうなる事予測してシュノーケル持って来てくれとったんかな。
流石隊長や。それやったら俺、隊長のせっかくの好意を…  
悪い事してもたな。
じゃぁ帰りは遠慮なく使わせて…
って!危うくのせられそうになってもたわ!

隊長の気持ちは嬉しいですけど、シュノーケルは絶対に間違ってますから!
っていうかそれよう見たら基地の資材ですやん!
勝手に持ち出さんといて下さいっ!

 ッ!! そんな寂しそうな顔したって絶対使いませんからっ!!


NO.07


モドル