+++たいちょうかんさつ日記+++ |
花粉症 |
今日はもう花粉飛びまくりで最悪やで! 今までどうもなかったのに今年はこれまでの何十倍の花粉が飛んでるっておかげでついに俺も花粉症になってもた。 あ〜!花粉の話しただけでよけいに痒なってきたわ〜 で今日はこんな日に限ってヘリからの降下訓練。 ただでさえ花粉飛びまくっとるから外の空気に触れたくもないのに、よりによってそんな風をあびまくる降下訓練。 「(花粉)怖い〜降下したない〜!パスさせて〜〜」ってヘリの中でダダこねまくって逃げ出したかったけどそんなわけにもいかへんから、覚悟を決めて薬もたらふく飲んで訓練をしてきた。 …やっぱりアカンかった。薬全然きかへん。一回目の降下で風にさらされただけで、くしゃみは出るわ鼻も出るわでエライ事になってもた。真田隊長や他の隊員にも風邪かと間違われてしまうし。 誰やったか「おっ、嶋本風邪か〜。これぞまさしく鬼のなんとかだな!」って言いやがった。 風邪ちゃうわ!今日は花粉症で反撃どころじゃなかったけど今度覚えとけよ! あ〜もう最悪や〜〜!! 目までムズかゆくなってきてもた! 最初は『我慢、我慢、我慢!』ってめっちゃ必死に自分に言い聞かせて耐えようとしたけど・・・ やっぱ無理!もう限界!!目が赤くなろうが知ったこっちゃないわ!と一気にゴシゴシ擦りまくった。 一度擦り始めたら最期。次から次へと触発された新しい痒みが襲ってくるからどこぞのCMちゃうけど「止められない止まらない」状態になってまう。 「嶋本、目真っ赤だぞ。そんなに擦ると角膜傷つけるぞ。その辺で我慢しろ」 と隊長に注意されてもた。 でも無理!これだけは花粉症になった者にしかわからん苦しみ。いくら隊長が心配してくれてのお言葉であってもこれだけは無理!聞けません! つうわけであまりの痒さに思わず 「無理です!そんな事言われても痒いもんは痒いんですっ!!」ってめっちゃキツ言ってもた。 うわっ、しもた!キツ言い過ぎた!俺の事を考えて隊長は言ってくれたのに。気ぃ悪うされたやろな…どないしょ〜! って、今更反省しても後の祭りや。 その後訓練はつつがなく終わり基地までヘリで戻ってんけど、その間も座席の位置的に隊長と話す機会がなくて謝れず、気まずい気分のまま基地へ戻ってきてもた。 基地に戻ると隊長はすぐ今日の訓練報告って事で日報を作成し、基地長に提出しに行って…と忙しそうやったからどんどん謝るタイミングが… 目は未だにかゆいし鼻もすごいし、隊長には謝られへんし、そんなこんなで気分はドツボ、どん底やった。 隊長ごめんなさい〜 他の隊員も今の俺に近寄ったらやばいと察知したんか、遠巻きに放置プレイやし。 チクショー!ちょっとくらい大丈夫かって声かけてこいよ! だんだんすべての事がムカついてきた。(完全なる八つ当たりってやつやな) 「嶋本、大丈夫か…」 机の上にMyティッシュ箱かかえてつっぷしてズビズビ情けなく鼻かみながらヘソ曲げてた俺の背後から声が降ってきた。 その声の主こそ俺が早く謝りたくてしかたなかった隊長やった。 「隊長!さっきはすんませんでした!」 イスからガタッと立ち上がって深々と頭を下げて謝った。 「いや、俺の方こそ嶋本の辛さも分からないのに悪かったな」 そんな事ありません!って言おうと頭をガバッと上げたら、 目の前に… ゴーグル…? はっ? 隊長の右手にはレスキューの時に使うゴーグルが… そしてそれを俺に向けて差し出してはった。 「…?隊長、これ何ですか?」 「ゴーグルだ」 そのまんまですやん!と思わずつっこみそうになるのをなんとかギリギリ我慢した。 「これを付けるといい。もう遅いかもしれないが、花粉よけになるだろう」 『本気』と書いて『マジ』ですか? それとも真顔で冗談ですか? 「さぁ、遠慮はするな」 さらにズイッと目の前に近づけられた。 本気や! 明らかに何か間違っとるけどきっと隊長なりに俺の花粉症対策を考えてくれたんやろな。 それとも実はさっきキツ言ってもた仕返しか? もしくは冗談やけど、俺が付けるか付けないかで隊長への忠誠心を試されてるとか…? …………… いやいや!隊長がそんな人を試すような事するはずない! 純粋に俺の事を心配してくれてのお言葉や! この前は(断ってもたけど)満員電車に乗るからって俺の為にシュノーケル持ってきてくれてたくらいやし! 決めた! 俺は付けるで! 隊長の優しさを今度こそしっかり受け止めてみせるで! 「ありがとうございます隊長!…じゃあ遠慮のう使わせてもらいます」 「あぁ」 俺は覚悟を決めて隊長からいつも使いなれてるゴーグルを受け取り、訓練中でも海中でもない基地の待機室でゴーグルを装着した。 「似合うぞ嶋本」 ……ありがとうございます。って今褒める所とちゃいますから。 やっぱ隊長ってレスキュー以外の事に関しては何か微妙に…いやかなりズレとるんよな。 そしてその後の俺はというと、ずっとゴーグルを装着したままで仕事をした。 ゴーグルのおかげか、いろいろグルグル考えすぎたせいか、今になってやっと薬が効いてきたのかよくわからんけど何となく痒みが落ち着いてきた気もしてきた。 隊長と俺のやりとりを見とったヤツはまるで禁句のごとくゴーグルの話題はしなかったけど、俺としゃべる時の目線はみんなぎこちなく泳いでた。まぁそれはしゃーないやろ。からかってこーへんだけまだましや。 しかしこのやりとりを知らん別の隊の奴らが訓練やレスキューから戻って来るたびに俺は笑いの的にされた。(そりゃそうやろな、基地でゴーグルつけてパソコンいぢったりしとるねんもん) だが、ゴーグルを笑うって事は隊長の優しい心遣いを笑ってるのと一緒! ふざけんなー!!とその度に俺の華麗なる蹴りが基地内を飛び交った。 真田隊長はというと、イスの背にもたれて背筋を伸ばしながら顔だけは俺の方をむいて 「嶋本はいつも元気で見ててあきないな」 と笑ってた。 うわっ!貴重な隊長スマイルやっ!めったに笑わん隊長が俺に微笑んでくれとる。 写メりてぇ〜〜! ってちゃいますやん!素敵スマイルに危うく騙されそうになったけど今はそうじゃなくて! 隊長!!そんな他人ごとみたいに傍観しないで下さいよ! 俺は今!隊長(のお心遣い)を守るため戦ってるんですから!! そんなわけでゴーグルを装着した俺は、敵が現れる度、隊長を守るべくその後も戦い続けた。 追記>この後、めっちゃ意外な話やねんけど、日報の再提出とかで隊長が基地長室に呼び出されててん。隊長が再提出なんて…こんな事今までなかったのにどないしはったんやろ? |