+++たいちょうかんさつ日記+++ |
たこ焼き |
「えっ!何年も食べてへんて!?」 あまりの驚きに思わず隊長にタメ語で話してもたで。 休憩中の事やねんけど、ニュースを見よ思ってテレビをつけたらちょうど『大阪くいだおれ粉もん特集』って番組をやっとってん。 画面いっぱいに映し出されてるのは、出来たてホヤホヤ湯気出まくりでこんなん一口で食べられへんやろってくらい大きなたこ焼き。そしてそれに自家製ソースがたっぷり塗られてその上にたこ焼きが見えんくなるくらい鰹節がドバッとかけられて、それが熱で踊り出すのを止めるかのようにこれまたサービス満点におもいっきりかけてくれるマヨネーズ… あ〜〜旨そう… テレビからあの香ばしいソースの香りがしてきそうや〜 ゴクリ。 と俺がテレビに映るたこ焼きに釘付けになってた時、 「嶋本、何固まってるんだ?」 と言いながら休憩室に入ってきた隊長。 俺とはテーブル挟んだ対面側の長イスに腰掛け、なんと俺にまでお茶を入れてきて下さった。 「うわっ!スンマセン!俺がしなアカンのにっ!」 「いや気にするな。いつもしてもらってばかりだからな。」 ホンマすんません。「ありがたく頂きます。」とお礼を言って俺専用マグカップを受け取った。 「あぁたこ焼きか、旨そうだな」 テレビをチラッと見て番組内容を理解した隊長が俺の釘付け理由を分かってくれた。 「ですよね!俺昨日も丁度たこ焼き食べたばかりなんスけどまた食べとうなりましたよ〜」 あの『外はカリカリ中はトロトロ』って独特な食感、そして甘辛いなんとも食欲そそるソースの香ばしさを思い出したら節操なしに生ツバが出てきてもた。 もうたまらんわ〜 「たこ焼きか…そういえばもう何年も食べてないな」 「えっ!何年も食べてへんて!?」 ここでやっと冒頭の俺の言った言葉につながるねん。 一瞬聞き間違いか思たで! たこ焼き何年も食べてへんなんて信じられへん! 確かに関西は他の県よりもようたこ焼き食べとるかもしれんけど、それでも何年も…てヒドイやろ。 食べなさすぎやで! たこ焼きに失礼やで。 俺なんて最近でこそ忙しいから月に数回くらいしか食べられへんけど、実家におった時なんか週に一回は必ず夕食にたこ焼きかお好み焼きが出てきとったで! 「隊長、何年も食べてないてホンマですか?!」 「あぁ、食べる機会がないからな。祭りに出向く時間もないし」 はぁ?祭り?? 「あの、隊長、何でここで『祭り』が出てくるんですか?」 祭りってあの神社とかで季節ごとに行う祭りの事? 「 ?? たこ焼きは屋台で売るものだろ?」 信じられへん! 何年も食べてない上に、たこ焼きは屋台でしか食べられへんもんやて?! いくら天然で名高い隊長でもそれは奇想天外珍回答すぎますよ! 「隊長は家でたこ焼き作らへんのですか!?」 「嶋本家は家で作るのか?たこ焼き屋だったのか?」 「ブッ!何でそこでたこ焼き屋になるんですか!関西じゃあ家庭でたこ焼き作るなんて普通ですよ!一家に一台たこ焼き器も必ずありますし!」 「それはすごいな。さすがたこ焼きの本場だな」 すごいなて… 表情は相変わらず変わらへんけど本気で驚いてはるわ。 うわ〜カルチャーショックやで〜 軽い目眩もしてきたわ。 関西と関東でこないに食文化が違うとは。 あんな旨いたこ焼きがこんなに普及してないなんて思わんかった。 っていうかこれは関東人全ての人の認知度と考えてええんか?それとも隊長が特別すぎるのか、どっちやろ? まぁどっちにしろ関西人としてはここはビシッと隊長に正しいたこ焼き道を布教しなアカン! たこ焼きは家で作れるものなんやとわかってもらわな! 俺は一代奮起して立ち上がった。 「わかりました!隊長、今度の非番の日予定入ってますか!?」 「??…いや、何もないが」 いきなり立ち上がった俺に隊長がちょっとめんくらった感じで俺を見上げて答える。 「じゃあその日俺ん家でたこ焼きパーティーしましょ!俺作るんで隊長食べてくださいっ!」 「…たこ焼き、パーティーか」 うひゃ〜〜誘ってもたよ〜! しかしパーティーて何やねん!勢い余って言ってもたにしてももっとマシな誘い文句ないんかい。 ダサすぎやで。 あ〜隊長めんくらったままや〜 今何考えてはるんやろ〜 もしかしたらさっき俺に合わせてテレビに映ったたこ焼きを旨そうだと言ってくれたけど実はそんなに好きじゃなかったとか…それでもう何年もたこ焼き食べてなかったとか…だから今更どう言って誘いを断ろうかと気ぃつこて悩んではる??もしくはたこ焼きはいいとしても俺が作るのを食べらなアカンって事に躊躇ってる??隊長の前で料理した事ないけど俺意外と上手いですか!安心してください!って、もしかしたら『たこ焼きパーティー』って響きの怪しさに不審がってはる!?あれは勢い余った言葉のあやってもんです〜 「マ…、嶋本!」 ハッ!すっ、すんません!トリップしとりました! 「…やっぱ無理ですか?」 おそるおそる聞いてみた。 「いや、楽しみにしてるぞ。」 マジ!? ヤッター! 隊長ゲットー! っておいおい目的変わってきてるがな。今回は『たこ焼き道布教』という重大任務を果たさなアカンねんから喜んでばかりはおれんで! 「男嶋本!隊長の為に本場のたこ焼きを見事に作ってみせますから楽しみにしてて下さい!」 「あぁ、よろしくたのむ」 ってなわけで次の非番に隊長と二人で俺ん家でたこ焼きパーティーをする事になった。 もうめっちゃ楽しみやわ〜 って最近、隊長日記っちゅーかレポートっちゅーかようわからんもんになってきててゴメンな。 また『たこ焼きパーティー』実施したら、ここで多分報告すると思うから暇な人だけまた見に来たってな。 |