+++たいちょうかんさつ日記+++ |
(続) たこ焼き -初体験- |
「あっ、隊長…ちょっ、ちょっと待って下さい!」 「ん?」 「あっ、入れすぎっ!」 「…まだいけると思うが」 「アカン…そんなに入れたら後がキツなりますて…」 「そうか?」 「そう、ちゃんと後の事考えてゆっくり、少しづつ入れて…」 「こうか?」 「あっ…イイ感じ」 「なかなか楽しいな」 「あっ!隊長っ、ちょっ、ちょっとストップ!待って下さいっ!」 「いや大丈夫だ。もうコツは掴んだぞ」 「大丈夫ちゃいますて!…あっ、アカンッ!溢れるっ!」 ・・・・・。 思い返してみたけど、コレってシチュエーションわからんかったらかなりヤバイ会話やんな。 こんな会話気付かず平気で出来とった自分に乾杯やわ。 って、そろそろネタばれ。 あれや、前日記で書いたたこ焼パーティー。昨日やっと非番でする事できてん。でコレはその時の会話の一つ。何もやらしい事してへんで! 夜ご飯にたこ焼をしようって事で、昨日は昼過ぎから隊長と待ち合わせして、久しぶりの非番を隊長と一緒に本屋とかCD屋とか雑貨屋とか特に目当てのモノはなく適当にブラブラと、たわいない会話をしながら普通の人がやってそうな休日を満喫する事ができた。 で、だんだん日も傾き西の空がオレンジ色になり始めた頃、駅前のスーパーに寄ってたこ焼の材料や酒、つまみ等も適当に見繕った。 会計して袋に詰めたらちょっと買いすぎたようで、袋が二つにまたがってもた。まぁ普段なら一人分やけど今日は二人分の食料と酒やからこんなもんか。 すると隊長が袋を二つとも持って出ようとしたんで「俺が持ちますからっ!」と何とか一つだけ奪い返す事に成功し、結局二人して一つづつスーパーの袋を片手に下げて官舎までのちょっと長めの道のりを歩いて帰った。 これから始めるたこ焼作りの予習を兼ねて隊長にたこ焼の作り方を説明したり、関西人がどれだけたこ焼とかの粉モン好きかという俺の粉モン歴史等隊長が興味あるかどうかわからんけど、時々頷きながら聞いてくれることをいい事に官舎に辿り着くまでの間、殆ど俺が一方的に話し続けた。 スーパーでは隊長がカートを押してくれてそれに俺がバンバン要るもん入れていくって感じの買い方やってん。で、帰り道は二人並んでスーパーの袋一つづつ下げて他愛無い話しながら一緒に家まで歩いて帰ってん。 なんか今日の俺らって、ちょっと新婚夫婦っぽくない? って一人でこっそりそのシチュエーションに萌えてもた。(アホや俺) まあそんなアホな話はこの辺で本題のたこ焼パーティーの話や。 部屋に着いてから暫く隊長には適当にその辺に座ってもろといて、俺は今買ってきた材料を切ったり生地を調合したり…まあ作り慣れたいつもの工程やから10分もあったら余裕で用意出来た。 ほんでテーブルに隊長が初めて見たという『たこ焼器』を出して準備完了。 このたこ焼き器もいろいろ種類あるけど、今一番便利なのはやっぱり電気プレート系のたこ焼器やな。 昔はガス管から直接ホース引いてっていうミニサイズやけど本格的なたこ焼き器もあったけど、今は殆どめんどくさくて殆ど使われてへんわ。で、主流なんはガスコンロの五徳の上に乗せて使えるたこ焼き器。台所で料理する感じで気軽にたこ焼が作れるからたいていこれで家庭のたこ焼は作られとるわ。ただこれは台所で作らなあかんからみんなで囲んで作りつつ食べる事ができへんし俺は嫌いや。まぁテーブルにガスボンベ式のコンロを用意すればいいんやけど、あと片付けがめんどうやな。 で最近便利なのが出よってん。それが電気プレート系のたこ焼き器。コンセント一つあったら卓上でたこ焼を焼く事が出来るねん。フッ素加工のプレートやから後片付けもめちゃくちゃ簡単やし。「そんな電気プレートなんて邪道やで」って最初思とってんけど、これがなかなか性能よくて、ガスコンロで作るとどうしても火が強すぎたり弱かったりで焼き目のムラが出てもたりしててんけど、この電気たこ焼き器やったら真ん中でも端の方でも、均等に焼く事出来てなかなか出来栄えエエもんが作れるねん。 で、最初は俺が作っとってんけど、あのクルクルと回して焼いていくのを見て面白そうって思いはったみたいで、隊長が自分も作ると言いだしはった。 で、ここでやっとあの最初のヤバめの会話に繋がるわけや。 くり返し言うけど、やらしい事なんかしてへんからな! あれな、隊長がたこ焼き器に生地を注いどった時の会話やねん。 たこ焼器のプレートってどんな形で、どんな焼き方するかだいたいは知っとるやろ? 鉄板に半円の丸い凹み穴がだいたい9個〜18個分あるボコボコしたやつや。 あの半円に生地と具を入れて、程よく表面が焼き固まったら棒でクルっとひっくり返して残りの半円を焼き上げて時々クルクル返しながら表面が全体的にキツネ色にカリっと焼きあがったら出来上がりっちゅーわけや。簡単やろ。 で簡単やねんけど、最初に生地を穴に注ぐ時、「一つの穴にどれだけ粉を注ぐか」これが出来上がりの良し悪しを決める重要ポイントになるねん!簡単なりにもこだわりのコツがあるねん。 半円やからって半円いっぱいに生地注いでもたら、そこにタコとかの具を入れると生地が溢れてまうし、出来上がりも粉っぽうなってまう。だから生地は後で入れる具の事も考えて、だいたい7〜8分目で留めておくのがポイントや。 で、隊長がいざ生地を注ぎ始めたらやっぱり初心者なもんやからついつい入れすぎてまうねんな。 で、俺もついつい口うるさい姑みたいに料理指導に口つっこんでもたわけ。 あの「入れすぎ!」って言っとったのはたこ焼の生地のことやってん。 小さな穴にプルプルしながら7〜8分目で生地をを注ごうと頑張ってはいるねんけど、何せ初めての経験やからついつい勢いよく生地を流し込んでまう。上手く入れれたのもあれば溢れてもたのもあって。 あの後あまりに俺がいろいろ言うもんだから 「嶋本少しダマってろ」 と注意されてもた。 ハイ、すんません。 それから具入れて、半面が焼き固まった頃に棒でクルっとひっくり返して… ってこのひっくり返しが初心者にはなかなか難しいねん! 案の定、上手くひっくり返らずグチャって潰れたり、破れたり散々たるものだったけど、もはや口出し出来ない俺は、ただただ口が開きそうなるのを手が出そうになるのを必死に抑えヒヤヒヤと見守る事しかできなかった。 「なかなかたこ焼は難しいな。嶋本が簡単そうに作るから出来ると思ったんだが…」 これが隊長の初たこ焼感想だった。 そして俺の目の前には隊長が初めて作ってくれた、たこ焼き?? あの丸くないんですが…(汗) 見事に全部ひっくり返しを失敗して、イメージとしては丸いたこ焼を上から容赦なくグチャ!!ってつぶしたような『つぶれたこ焼』になってしまってた。 「最初は誰でもそうですよ!数作ったら上手くなります」 と言って隊長をフォローしておいた。 それが間違いだった。 「じゃあ丸く作れるようになるまで練習するぞ」 えっ! 「嶋本、どんどん作るからどんどん食べろ」 ええっ!! 隊長がヤル気になってもた。何かしらんけどたこ焼が隊長のツボに入ってもたみたいや… こうなったら誰も隊長を止められん…。 結局途中で用意してた生地がなくなってもて、急遽また駅前のスーパーまで粉買いに走らされて… また生地が出来たら隊長はひたすら焼き続ける… まあその練習の甲斐あって、どんどん綺麗に丸いたこ焼が出来るようになってんけど… その代わりに焼き上がったものの、二人の胃には入りきらん量のたこ焼が… つぶれたこ焼、半円たこ焼、真っ黒たこ焼、そしてやっと作れるようになった丸いたこ焼… どないするねんコレ…もう食べられへんで。たいがい俺も限界まで隊長のたこ焼を頂いた。でもこれ以上は無理です。もう入りません。ギブです、隊長。作りすぎです。 隊長も作るのに必死で、出来上がったたこ焼の始末法までは考えてなかったみたい。 一つの事に容量いっぱいいっぱいになるのはレスキューに限らずやったんや。 でもせっかく隊長が作ってくれたたこ焼を処分するのも悪いしな。 で、考えた。 「三隊集合!今日の昼ご飯は全員で隊長お手製のたこ焼や!」 残ったたこ焼を全部タッパや皿に並べてラップして今日基地に持ってきてん。 カリッと感はなくなってまうけど、とりあえず基地には電子レンジもあるし、ちゃんと家からソースも持ってきたし大丈夫食べれる! ただ、当たり外れがあって、『たこ焼』って言われて渡されたのにどう見ても原型を留めてない『未知との遭遇的なたこ焼(つまりはつぶれたこ焼)』を渡された隊員は、最初に「隊長お手製」って俺が言ってるもんやからツッこむにツッこめなくてホンマに食べて大丈夫なんかと複雑な表情をしながら、恐る恐る口に運んでた。 味は大丈夫や!保障したる! 昨日俺はそれをイヤっちゅーほど食べさせられたけどピンピンしとるからな! ただ見た目がごっつー悪いだけや! |