☆ みうのすけ様からの頂き物 ☆
「俺は幸せ者だな、と思うんだ」


呟くように、零れた言葉。

穏やかな目で窓の外を眺める、その横顔を隣に立って
そっと見上げ、次いで同じように外をみつめる。

目にまぶしい、瑞々しい緑と。
抜けるように鮮やかな蒼と。
そして、点在する白と。
頬を撫でる薄い、ほんとに薄い桜色。
目には見えないけれど、たぶんこんな色じゃないか。
そんな気がする。

同じ部屋にいて。
隣に立っていて。
同じ景色を見て。

…視線の位置が違うから全く同じ風景ではないのかもしれないけれど。
でも、それだけじゃなくて。

一緒に、同じ世界にいるはずなのに。
一緒に、同じモノを感じているはずなのに。

本当は全く違う別の世界の住人なんじゃないか、と思ってしまう。

いつもは意識しないけれど。
今日みたいに、突然変なことを言い出すから。

忘れていた感覚がよみがえる。

「急に、どないしたんすか?」

聞きたくないけど、聞いてしまう。

「不謹慎かもしれないし、酷いヤツなのかもしれないが」

視線は移さずに、ただ言葉だけが紡がれる。

「自分のために泣いてくれる人がいる」
それが、とてつもなく幸せなことに思える。
そんな人がいる自分は、本当に幸せだと思うんだ。

そう言って、隊長は、わらった。



「あ……」

自分が何をしたのかわからなかった。
自分が何でそんなことをしたのかわからなかった。

頭で考えるより先に
勝手に身体が動いてた

「あ…あ…」

「お前が気に病むことはない。…当然だな…」

そう言って、やっぱりわらいながら――自嘲にも見えるけれど――切れた口端を
抑えた。

「…すまなかった」
「………」

なにが?なにがすまないの?
あやまるのはおれのほうやないの?

…いや、おれはわるくない。
おれにあんなはんだんさせたたいちょうがわるい。
おれにあんなおもいさせたたいちょうがわるい。

おれにあんなおもいをさせておいて
おれがどんなおもいをしたかなんて
ぜったいにたいちょうにはわからない
わかるわけがないし
わかってほしいともおもわない
けど

なんでしあわせとかいうの?

「…すまなかった…」
「なんも…わかっとらん…くせに…」
「…すまなかった…」
「ひと、泣かせといて」
「…すまなかった…」
「それで幸せとか感じてるって…」
ひどいひとや…

「自分でもそう思う」
でも、一人じゃないんだと…実感させてくれた。


人は一人では生きていけないと実しやかに言うくせに
実際は、いつもいつも、
結局は人は一人なんだと
何が起きようとも自分に関係がなければ
所詮は人事なんだと
結局はみな自分が可愛いのだと
いつだってシビアな現実を突きつけてきた

あのときだって同じやないですか
俺はあなたを見捨てた
結局、あなたに人は一人なんだと
そういう現実を突きつけただけやないですか

でも、お前は泣いてくれた
俺のために泣いてくれた
それだけで充分だ

どうして?
俺があなたを見捨てた。その事実は変わらんでしょ?

でも、泣いてくれた。
お前にとって俺がどうでもいいヤツだったら、
お前は泣かないだろう?

そんなん…

あの判断は、あの状況であれば仕方ないことだ
そんな過酷な判断をさせてしまったのは俺だというのに
それなのにお前は泣いてくれた
……俺のために
……とても嬉しかった

あほや…あんた正真正銘のあほや…


おれがないたくらいで
そんなしあわせかんじるなんて
あほや
あほすぎてなみだでてくるわ

「嶋本…ありがとう…」

頬にそっと指が触れられる。
あたたかい…無骨な、でも器用に動く指。
何度も何度も目元を拭われる。
やさしく撫でるように。

「俺も幸せ者なのかもしれん…」
「ん?」
「こうやって…俺が泣いても幸せだなんて思ってまうノー味噌沸いとる奇特な人
が一人でもおるって…」
「脳味噌沸いてる奇特な人とは俺のことか?」
「他に誰がおるっちゅうんですか?」
「もう少し他に言いようがあるだろう」
「ありません」

にっと笑ってそう言うと、やわらかい笑顔が返ってきた。



誰かのために泣けること
自分のために泣いてくれる人がいること
それって本当は
すごく贅沢な幸せなんじゃないだろうか?



END

うわ〜〜〜サイト1周年のお祝いにとみうさんが素敵SSを投下してくださいましたよ〜〜!ありがとうございます〜!こんなアホなサイトにこんな綺麗なお話を…(オロオロ)もうありがとうございますとしか言い様がありません。これからもアホなサイトですがサナシマ大好きな限り無駄に迷惑顧みず頑張りたいと思います!笑。ありがとうございました!!
私信>>みうさんそろそろサイト作ってくださいよ〜。楽しみにしてますね!


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