■割烹着祭■  みうのすけさん提出作品(笑)
前回の祭りに引き続き、みうさんの作品はブログにアップされてましたが、こちらにもアップさせていただきました。
みうさんのブログはパスかかってるのでせっかくの祭で書いてくれたのに他の人見れないんじゃ悲しいじゃん。
そろそろオープンサイトを作って下さい。笑



割烹着

トントントントントン……

…ん?なんや…?あ〜なんか懐かしい音がする……。
そういや、いっつもギリギリまで寝とっておかんに「早よ起きぃっ!!」って怒鳴られたな…。

「って、ちょお待て!」

えっと…ここは俺の部屋で。この天井にベッドから見える景色も見慣れたもので。うん。それは間違いない。

で、俺は大阪やのうて横浜に住んどって。当然一人暮らしで。
やから、この家に俺以外のヤツがおるはずなくて。

やけど、なら…なしてネギ(やと思う)を刻む音が聞こえるん?しかも、なんやええ匂いがしてくる〜。
あ〜なんやろ〜?味噌汁は豆腐と油揚げがええなあ。で、アジの開きと〜。おまけにあんま〜い卵焼きがあったら、最高やなあ。

「って、どー考えてもおかしいやろ!誰やっ!勝手に人ん家に朝っぱらから入り込んどるヤツはっ!!」
「俺だ」
「たっ隊長っっ???」
「おはよう、嶋本」

声はすれども姿は見えず…って、そないなこと言っとる場合とちゃうやろっ!
なっなして隊長が俺ん家におるん?しかもしかも、俺ん家の台所で朝飯作っとるって……どゆこと??

「嶋本。いつまでそのままでいる気だ?早く顔を洗ってこい」
「へっ??あ……はい……」

えっと……確かに…この声は隊長や…間違いあらへん…。
けど…昨日は隊長お泊りせえへんかったはずなんやけど…。

…ま、確かにこのままってわけにもいかへんし。
隊長に訊くのはそれからや。

「あの…隊長…?」
「なんだ?着替えは済んだのか?」
「それは終わったんすけど…」
「それなら、早くお膳の上を片してくれ」
「はあ…」

お膳……って、このローテーブルのことやろな。いつものことやけど、ホンマ隊長の言葉聞いとると昔懐かし古きよき日本って感じやわ。

「隊長〜片しましたよ」
「そうか。なら箸と茶碗を持っていってくれ」
「はい。って、隊長ーーっっっ!!!!!」
「嶋本…朝からでかい声を出すな」
「〜っっ*%$#+??!!??」

やってやって………
ありえへん………
なんぼなんでもありえへん……

たちの悪い冗談や……
これは夢や……
悪い夢を見とるんや………

「嶋本…何を突っ立っているんだ。お前が持っていかないと俺の手があかないだろ」
「……こんなん…こんなん……俺の知っとる隊長やない〜っっっ!!!」
「何を朝からふざけているんだ。俺でなくて誰だと言うんだ?」
「やって…やって……」
「まだ寝惚けているのか?」

そっそうや。俺、まだ寝とるんや……。って、んなわけあらへん!
…やったら…この俺の目の前におるんは……

…我らが隊長…真田甚…の形をした偽者やっ!!!

そうとしか思われへんっ!!てか、そう思いたいわ…

「嶋本。飯が冷めるぞ」
「……隊長……あの…訊いてもええですか?」
「なんだ?」
「なして、そないなかっこしとるんすか?」
「おかしいか?」
「………」

隊長……俺にそれを訊くんすか……?
おかしいとか…おかしくないとか…それ以前の問題として…

「なして割烹着着てるんすかっっ!!!しかもご丁寧に三角巾までつけてっっ!!!」
「たしか小学校の調理実習はこのような姿でやったはずだが…」
「いつの時代ですかっ!てかエプロンとちゃうんですかっっ!!」
「ああ、前掛けのヤツもいたな」
「……隊長……」

海保潜水士の憧れの的。カリスマ。神兵。レスキューロボ(これは違うか?)などなど数々の異名を持つ隊長がお玉持って台所に立っとるってだけやってありえへん図やのに…
それがあろうことか、これぞ心の故郷。伝統的な日本の母!てな感じの割烹着姿やで?しかも割烹着とおそろの三角巾までつけて……こないなことあってええのん?
これがありやっていうんなら、無我の境地を発動すると小宇宙が発生するってのもありなんか?

「…もうこの世の中が信じられへん……」
「どうした?嶋本。いつまでそこに立っているつもりだ?飯が冷めるぞ?」
「えっ?あっ…はい…そうですね。せっかく隊長が作ってくれはったんですもんね。冷めんうちにいただきます」
「そうしてくれ」

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「隊長…なしてエプロンやのうて割烹着なんすか?」
「袖が汚れなくて済むだろう?」
「そらそうですけど、隊長半袖やないですか」
「……」
「隊長?」
「…ネギを…」
「は?」
「ネギを刻むあの音を再現してみたかったんだ」

えっと…つまりあのトントントンっちゅうやつをやってみたかったってことなん?ホンマに?それにしては、この味噌汁ん中のネギ…どう見てもぶつ切りやん……
てか、それと割烹着がどう結びつくっちゅうねん!わけわからんっ!!

「ネギといえば納豆だ。だが嶋本は納豆嫌いだろう?だから味噌汁にしたんだ。味噌汁は和食だ」
「だから割烹着……」
「そうだ」

ネギが納豆になって味噌汁になって。で、和食だから割烹着って…連想ゲームですか?なんてベタな…さすが隊長や…

「だが、きちんと割烹着を着てネギを切ったのに、どうやってもあの音が出ないんだ」
「へ?」
「そこで三角巾もつけて再度挑戦したのだが、それでも無理だった」
「でも…あの音で目、覚めたんすけど…」
「嶋本」
「はい」
「なにもネギを刻む必要はなかったんだ」
「え?」
「割烹着を着てまな板を包丁で連打するだけでよかったんだ」
「…あれ…ネギ…刻んでた音やなかったんすね……」
「ああ」
「……」

隊長…それおもっきり間違ってますから…
割烹着着なくても、普通にネギ刻めばあの音出ますから…
割烹着は必須アイテムじゃないですから…

もうこれ以上おかしなスイッチ増やさんといて下さい……

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「ところで隊長。いつまでそれ着とるつもりっすか…?」
「せっかくだから後片付けが終わるまでは」
「…俺が片しますから早よ脱いで下さい…」