62話より
「妊娠か?」
―防災基地前編―


「高峰!今すぐ神林に連絡を!」
「ハッ、ハイ!」
真田は後ろにいた高峰にまるで訓練の時のような勢いで指示を出した。
「えっ、そんないいですから!気にしないでく…」
「こんな所で寒かっただろう。もう君一人の体じゃないんだから無理はするな」
といってポンとユリの肩に手をかけた。
「いや、だから違っ…」
「高峰!彼女が冷えたら困る!上着を貸してやれ」
また高峰に指示が出た。
・・・隊長の上着の方が明らかに暖かそうなんですけど。しかも私、この上着脱いだらTシャツ一枚なんですが―-
と思ったが言える雰囲気ではなく、諦めてユリに上着をそっと掛けてやった。

「いや、だから違うんですって!」
ユリは高峰に向かっても必死に訂正しようとしたが、
「うん、わかってます。でも隊長今スイッチ入っちゃって、こっちの言葉耳に入らない状態だから悪いけど暫く付き合ってもらえないかな」
イヤな思いさせてごめんね――と真田に聞こえないようこっそりと謝られた。

「高峰!神林に連絡は取れたのか!?」
「いえ!神林君から聞いてた番号にかけるんですが全然出ませんね。一度嶋にかけて聞いてみましょうか」
「あぁ頼む」

ピルルルル ピルルルル ピルルルル

ピッ
――はい!嶋本です――
「嶋ごめんね、今大丈夫?」
――はい、何かあったんですか?――
「ちょっとね。神林君と至急連絡取りたいんだけど、携帯繋がらなくて困ってるんだ」
嶋、居場所知らないかな??――という言葉を遮るように嶋の返事が返ってくる
――神林なら、今一緒に飯食ってますよ――
「エッ!?本当!隊長!神林君見付かりました!今、嶋と一緒にご飯食べてるんですって」
「・・・自分はのうのうと晩ご飯か・・・わかった。今からそちらに向かうと伝えてくれ」
「はい、わかりました…。というわけだから嶋、これから私達もそちらへ向かいます。場所教えて下さい。」
――えっ!?合流されるんですか!?って何かあったんですか?――
「ゴメン詳しい事は後で説明するよ。」
――はっ、はぁ・・・場所はですね・・・  ――
「ありがとう。それでは今からそちらへ向かいますね」
ピッ


「隊長、場所わかりました。駅裏のいつもの焼肉店にいるそうです」
「そうか、ならココからすぐ行けるな。 今から神林の元に連れて行ってやるからもう安心していいぞ」
「えっ!兵悟君に会えるんですか!!」
もうこのまま兵悟に会えないまま九州へ帰ることを覚悟してたユリはあまりの嬉しさに、先ほど真田に「妊娠か?」と最初間違われた時に見せた激しい否定と同じ勢いで思わず真田の腕にぐわしっ!っと掴みかかってしまった。
「あっ、ゴメンナサイっ!」
「いや、気にしなくていい。さぞかし心細かった事だろう、・・・お腹の子も」
「ッ!! だから違いますって!!」
「高峰、居場所が分かったからには今すぐ移動するぞ。彼女の荷物を持ってやれ」
「は、はい…」
「いや!自分で持てますから!いいですってキャァァァーーッ!!」
「たっ、隊長!!」
「さっ、真田さんっ!?おっ、降ろしてくださいっーー!」
「気にするな。妊婦にこれ以上歩かすわけにはいかないからな」
「だから私妊娠なんてしてませんてばっ!!」


「お願いだから降ろしてください〜〜!」

ユリの高めの声がみなとみらいに響き渡り、「何だ?誘拐か?」と周囲の観光客からは変な目で遠巻きに見られる中、真田一人だけが人の目を気にする事もなく、ユリを抱えたまま駅への道をズンズン突き進んでいった。
そしてその後ろからはもう11月も半ばだというのにTシャツ一枚で右手にはキャリー、左手には長ネギが飛び出たスーパーの袋を持った高峰が寒そうに小走り気味についてきた。

ックシュンッ!!






今回はサナシマ色0でお送りしております。その分暴走に重点をおきます!原作の続きを勝手に捏造という事で。あ〜〜でもやっぱり原作の隊長の暴走が凄すぎて、ウチとこの隊長じゃ役不足だよ〜〜あの「妊娠か?」の勢いを汚したくなかったんだけど、明らかに減速しちゃってるよ〜〜泣
あれだけユリちゃんに激しく否定されてるにも関わらず未だに妊娠を信じきって一人話を進めまくる隊長が書きたかったんです。スミマセン…
この後、「焼肉店乱入☆編」に続きます。まだひっぱります。笑



モドル