ペット


「ヒロはペット飼った事ある?」
夕食時、ちょうど付けっぱなしのテレビで放送してた「我家のペット自慢」を見た星野は同じく自分の向かいで夕食のカレーを今まさに口にほおばろうとしてる大羽に尋ねた。
「んなペットなんてシャレたもんは飼った事ないの〜家に犬はおったけどな」
「それが『ペット』じゃん。いいな〜」
「雑種やぞ。あいつにはそんな『ペット』なんてカタカナ似合わんわ」
ガハハッ!と実家の犬の姿とペットという響きを比較したのか思いっきり笑い出した。
そこまでバカにされるって一体どんな犬なんだろう…

「何や、星野は動物飼った事ないんけ?」
笑いが治まった大羽が逆に尋ねる。
「うん、実家もマンションだったからね。だからずっと何か飼ってみたかったんだ」
実家がマンションって都会ッ子じゃの〜〜、と論点の違う所で感心されてしまった。
 
「ほうか。星野なら…何が合うかの〜」
「何が?」
「ペットじゃ。そうやの〜、デカいのよりも室内で飼えるちんまい方が似合いそうじゃな」
「例えば?」
星野の問いに、「例えば、か〜〜」と持ってたカレースプーンを皿の上でカツカツと鳴らしながら頭の中で『ペットを飼う星野』を想像してゆく。

「う〜ん。カメとか?魚とか?」
魚?? …ああ、熱帯魚ね。ってどっちも水槽もの?!
俺ってそんな地味系ペットが似合う??と大羽の中の自分のイメージにちょっと悲しくなった。

「なんか、お前がペット飼うたら、今日あった事とかめっちゃ話しかけてそうやからな〜。お前の話逃げんと聞いてくれるペットの方がええじゃろ?」
うん。確かに話し掛けるかもしれない。でも、
「だからって水槽もの?何か俺の事バカにしてない?」
「してへんぞ。水槽もんが嫌やったら今流行りのネズミとか」
ネズミ?? …あぁハムスターね。流行りっていっても一昔前の流行りだよね。
それにさっきの魚といいネズミといい、大羽ってカタカナ苦手?
口に出したらそれこそ「バカにしとんのか!」と怒られそうだから口には出さなかったが、カタカナ苦手ってなんか大羽らしいな――と根拠もなく納得してしまった。そして「何笑っとんじゃ?」と大羽につっこまれた。どうやら顔が自然と笑ってしまってたらしい。


「う〜ん、でも俺としてはやっぱり犬とか存在感が大きいペットを飼ってみたいな」
「外で?室内で?」
「そうだね。どうせ飼うなら室内がいいな。」
初心者がいきなり大型犬に手ぇ出したら大変やぞ〜〜と犬を飼った事のある経験者大羽はあれが大変だこれが大変だといろいろ語り始めた。大羽の所の犬もかなりの大型犬で、語れる程に振り回された経験があるようだ。

「そっか〜そんなに大変なんだね。でも家でくつろぎながら犬をなでてみたり抱きついたりしてじゃれあってみたいな〜〜」
現実的に世話が大変だと聞いても、ペットを飼った事ないが故に持つペットに対する憧れはそう簡単に捨てられない。
「お前に飼われる犬は大変そうじゃな」
「そう?愛情たっぷりなのに?」
俺きっとすっごい可愛がると思うよ、と自信満々に星野は答える。
「お前は極端なんじゃ。可愛がりすぎて全然放してくれなさそうな感じがするで」
「アハッ、それは言えるかも!」
さすがヒロ!俺の事よく分かってる!まだ飼う予定もない未来の自分のペットを想像してこんなに楽しいなんて。
世話が大変でもやっぱり飼うなら大型犬がいいな。毎日楽しそう。


「…ってお前さっきから何触っとんじゃ」
「ん?」
いつの間にやら、テーブルはさんで向いに座ってたはずの星野が自分の横にちゃっかり並んで座っていた。そして後ろから抱きしめる形で左手を大羽の腰に回し、肩に自分の顔を埋め、右手は何故か大羽の頭を撫でていた。

「・・・・・何がしたいんじゃ」
とりあえずまずは理由を聞いて、それから怒るなり、払うなり対処法を決めよう、と星野に頭を撫でられたままの状態で回答を求める。

「ん〜、ペットがいたら丁度こんな感じかな〜って思って。」
大羽を撫でながら未来のペット(希望:大型犬)を想像してるらしい。

!!!!

「いや、よく考えたらヒロっていいよね!逃げずに俺の話ちゃんと聞いてくれるし、家でくつろぎながらなでたり抱きついたりしてじゃれあえるし…なにより人間だから会話も出来るし!」
「はぁ!?」
おいおい、ちょっと待て、待て。
「そうだよ!!大羽が俺のペットになってくれたら一番いいんだ。」
そういうと後ろから抱き付く態勢だった星野が自分から離れ、今度は自分の前にズイッと覗き込むように顔を出してきた。
その時の星野の顔は――ナイスアイデア!と言わんばかりに嬉しそうな笑顔だった…。
「おまっ、」
「ねぇ大羽!俺すっごい可愛がるからさ〜俺のペットになってよ!ねっ、俺のペットを飼ってみたいってささやかな夢を叶えてよ〜お願いぃ〜〜」
ユサユサユサ・・・
両肩をしっかと握られ上体を揺さぶりながら可愛くお願いされる。しかもその内容は自分のペットになって、と。


「寝言は寝て言えー!」





――そんな事、今更ペットにならんでもいつもしとる事じゃろ!――って喉まで出かかったが、この発言は星野を喜ばす以外の何者でもなかったので何とかギリギリで口から出るのを堪えた大羽だった。






うわ〜〜ついに★大書いてしまいました。すっ、好きなんですっ!真嶋と同じくらい。この二人には幸せになってほしいです。でも私この二人は大★だと最初ずっと思ってたんです。白星野君の場合は「大★」で黒(エロ)星野君の場合は「★大」みたいな感じかな。「ってどんなんじゃ!星野は一人で十分じゃ!」と大羽からツッコミはいりそうですが。苦笑
今回会話のキャッチボールが出来てちょっと新鮮でした。(某隊長だとキャッチボールが出来ないし。苦笑)
そして広島弁…激しく分かりません。嘘っぱちでスミマセン。英語とかの翻訳サイトがあるように、標準語で入力してボタン押したら一瞬で広島弁やメグル弁に翻訳してくれる素敵方言サイトはないかな〜と切に願います。




モドル