「あなたなら出来る」 |
「毎年お決まりの人命救助訓練はつまらないわ」 へっ? 突然機長がつぶやかれた。 「さすがは特殊救難隊!と見に来た人をビックリさせたいと思わない?」 はぁ…そりゃたくさんのお客さんに特救隊をアピールするいいチャンスですが… 今俺は航空基地へ出向いてた。今月末に行われる公開訓練の打ち合わせの為に。 メンバーは特救隊からは代表して俺一人、航空隊からは五十嵐機長と富岡さん。 後の航空隊員は機体の整備中とかで手を取られ終了しだい参加するって話や。 そやから今訓練の打ち合わせは三人でやっとるってわけで・・・ 「嶋、何かない?」 「えっ!俺ですか!?」 「あなた以外のどこに嶋がいるの?」 人数が少ない分白羽の矢はすぐ俺に飛んでくる。 「すっすいません!あの、案と言われましても突然すぎまして…」 「応用力に欠けるわね」 すいません… っていうか今日の打ち合わせは新案を考えるんやなくて毎年やっとる実施要項を再確認に来たつもりやってんけど・・・ 「それなら降下索なしのリペ降なんてどうかしら?」 ブフッ! 「どうかしら?って降下索なしの時点でそれリペ降とちゃいますやん!ただの落下ですやん!それも海中へならまだしも今回は船の甲板への降下ですよ!人として無理です!」 「そう?」 「当たり前じゃないですか!助けに行った俺が要救助者になってまいますよ!」 「それは本末転倒だわ。この案は却下した方がよさそうね」 「はい、即行却下でお願いします!」 もう機長一体何を言い出すねん!心拍数が一気に上がってもたわ!あ〜ビックリした! 「じゃあ富岡、何か案ない?」 「はい、申し訳ありませんが思いつきません」 「みんな考えが貧相すぎるわ」 たよりにならない男達ねと言わんばかりの物言いだった。 それから機長は本庁から送られてきた訓練実施要項をじっくり見直しながら次の案を考え始めた。 っていうか、実施要項の右上に押された『決定項』って文字は機長には見えんのやろか・・・。もう決定項やからこのブリーフィングで新案考えてアレンジしたらあかんのとちやうんですか? と多分富岡さんも思とるはずやけど、口には出さずお互いに「機長を止めて下さいよ〜」みたいに目配せで押しつけ合いをしている。 確かに無駄な話をこれ以上続ける余裕はないけど、今の機長にそれを告げる勇気はもっとないし。このまま何の案も浮かばず要項通りの訓練で落ち着く事を祈るのみやった。 しかし、 「思いついたわ!」 !! 機長が何か考えついてもたよ〜! 何や!?今度は何言い出すんや!? と俺も富岡さんもゴクリと生唾を飲み込んだ。 「急降下リペなんてどう?」 「「えっ!?」」 もしやあの機長お得意の高々度から海面ギリギリへの急降下にリペ降下を組み合わせるって事ですか!? フフッ ナイスアイディア私――と言わんばかりに機長めっちゃ満足そうな笑みを浮かべてるよ!またどこから出して来たんかボワッとお花しょってるよ〜〜 「特救隊の凄さだけでなく私たちヘリチームの技術の高さもアピールできて一石二鳥だわ。一番目立つ事間違いなし」 無理です!無理!全然一石二鳥ちゃいますから! 「どう?いい案でしょ」 いい案なわけあるかい! 相手が機長やなかったら速攻ツッコミ入れるところや。 「特救隊とヘリチーム、つまりは私とシマ、二人の共同作業って感じ?」 「そんな無謀な共同作業嫌ですよ!」 死んでまうわ! 「機長は俺を衆人環視の中で殺す気ですか!?」 明らかに殺人レベルですよ!と激しく抗議すると、 「そんなはずないじゃない。失礼ね。じゃあどんなのがいいの?」 無表情だが、今ちょっと不服そうに機長のほっぺたがぷうって膨らんだ気がしたのは幻覚ですか!? 「どんなって…もう例年どおりの普通のスライドリペでの人命救助案でお願いします」 「おもしろくないからイヤ」 お、おもしろくないからイヤって、機長はどこぞの子供ですか!? 「いくらトッキューでもそんな事できませんよ!無理ですって!」 「やる前から無理と諦めるなんて嶋らしくないわね」 いや俺らしくなくて結構です。こんなところで「進次レッツチャレンジ♪」って誰が前向きに考えれるんですか! 「いくら特救隊でも危険すぎます。」 「嶋…」 「はい、」 「貴方なら出来るわ」 「ブッ!"出来るわ"ってその自信がどっから来るんですか!」 「私にはわかる…」 「いや、俺にはわかりませんて!」 わかりたくもありませんて! 「信じてるから」 信じんといて下さいっ!! おわり☆ |
こちらは4月1日限定の五十嵐×嶋本サイト(ISL.com)で で掲載していたSSです。(エイプリル企画) 初めて書いたイガシマ。 ん?隊長が機長に代わっただけ?な振りまわされっぷり。結局嶋が振り回される話が好きなようです。ってか隊長と機長って似てるんだもん。似たもの同士嶋の取り合いバトルをすればいいと思います。 そして今隊長はインドネシアだから恵子たんのやりたい放題好き放題!嶋の受難の日々はまだ始まったばかりです。 |