隊長から電話があった。(夜電話編)
(注)この話はオフラインで発行した「拝啓、隊長お元気ですか」
で書いた話(電話編)の続きとなっております。


ピルルルル  ピルルルル

   来たっ!

   ゴクリ

   カチャ

「はい、嶋本です…」
『早かったな。今大丈夫か?』
「はい。大丈夫っす。待機してましたから」
『そうか。では早速昼間の件だが…』
    来たっ!
昼間の件・・・
そう、それで隊長は電話してきはったんや。
昼間基地に隊長から電話がかかってきた。
久しぶりの隊長からの電話で、しかも黒岩隊長が出たのを俺指名で途中から電話交代してしゃべらしてもうてんけど・・・
そこまでは良かってん。
久しぶりに隊長の声聞けて内心ちょっとジーンとしてもたりして。
そやけど途中から隊長何考えたんか自分の事をもう隊長じゃないんだから隊長と呼ぶな、「甚」と名前で呼べと拒否権なく言わされるハメになってもて・・・
逃げることも出来ず何とか腹くくって言ったんやけど、恥ずかしさのあまり気づいたら一方的に電話切ってもてて・・・んで折り返し隊長から電話かかってきた時は高嶺が受けてくれて上手いこと言ってくれたけど、また夜、今度は俺の家の電話の方にかけるという話になり・・・
それで俺は仕事後大急ぎで直帰し、隊長からの電話をドキドキしながら待っとったわけや。

「たっ、隊長!あの俺、あれから考えたんすけど!!」
『??』
「やっぱり隊長の事は『真田さん』て呼ぶのが限度です!隊長からこの電話貰うまで、じ・・・じっ・・・『甚さん』!って呼べるようずっと練習しとったんですけど、俺が隊長のすごい噂を初めて聞いた時から俺の中で隊長は『真田さん』やったし、特殊救難隊入って隊長が隊長になるまでもずっと『真田さん』て呼ばしてもろてたし、隊長が隊長になられてからは『隊長』って呼ぶようになってもてて・・・そやから俺の中で隊長言うたら『真田さん』か『隊長』しかありえへんのです。正直じっ、『甚さん』て呼んでも隊長の事やてピンとこおへんし、なんや知らん人の名前呼んどるような違和感がして・・・。隊長にはホンマ申し訳ないんですがやっぱり俺の大好きな隊長言うたら『真田さん』か『隊長』しかありえへんのです。」

『・・・・・・・』

「すんません・・・一気にまくしたててもて。・・・隊長、怒らはりました?」

『・・・いや、俺が名前でとわがままを言ったせいで困らせてしまったようだな。すまない』
「いえ、そんな・・・俺の方こそわがまま言うてもてすんませんでした」
『いや、こうして嶋が真剣に考えてくれた事が嬉しかった。ありがとう。』
「そんな・・・」
『そうか。俺が電話をかけるまでの間は俺の名前を呼ぶ練習をしてくれてたのだな』
「へっ!?」
『残念だ。その練習風景は是非見てみたかったな』
「ええっ!そんな見せれるもんとちゃいますよ!」
『どこで練習してたんだ?何かしながらか?それとも・・・そうだな、例えば、俺の写真を前にしてか?』
「ええっ!なっ!なっ、何でっ!」
『当たりか?』
「いやっ、ちゃいます!そっ、そんな写真を前にしてやなんて!」
『・・・声が裏返ってるぞ』
「!!!!」
  くすっ
ぬぁああー!バレてる!めっちゃバレてる!笑われたー!なっ、何でバレるねん!いつもは天然のくせにこんな時に限って鋭い千里眼を発動せんでくださいよ〜!もう穴があったら入って蓋して鍵かけて隠れたいわ〜!

『嶋?』
「・・・・はひ」
もうどうにでもなれ
『今ほど自分がインドネシアにいるというこの距離感を悔しく思った事はない』
「えっ…?」
『俺の写真を前に一生懸命練習してくれた嶋も、今こうして電話で話している嶋も、きっと顔を真っ赤にしながら俺と真剣に向き合ってくれているんだろうな。』
隊、ちょ・・・?
『今、こうして声は聞けるが、顔が見えないのがとても残念に思う。人とは貪欲なものだ。最初はせめて声だけでも聞ければと思っていたのに、いざ声を聞いてしまうと今度は嶋の顔が、姿が見たくなってきた。自分で志願しておきながらこんな事ではいけないな。すまない、気にしないでくれ』
「・・・俺も、隊ちょの顔、すごい見たいです・・・」
『嶋・・・』
  !!!
「すっ、すんません!俺何調子こいとんやろ!めっちゃ恥ずかしい!」
『嶋も同じ気持ちでいてくれて嬉しい。』
「・・・・・」
『そうだ嶋。いいこと思いついた』
「はい?」
『次回からはテレビ電話だ!』
「はぁ!?」
『テレビ電話なら声も聞こえるしお互いの顔も見える。良いと思わないか』
「ええっ!」
『どうして今まで気づかなかったんだろう。そうすれば毎日嶋本の可愛い姿が見れるというのに。』
「かっ、可愛い!?」
『テレビ電話さえあれば我慢する必要はどこにもなかったんだ。よし!善は急げだ!明日にでも互いに買いに行って用意しよう。嶋本、明日時間はあるか?』
「あっ、はい、明日も待機なんで定時終了予定っす」
『なら買いに行けるな。では明日買いに行って・・・そうだな、また今日と同じ時間帯に電話しよう。それまでに設置完了させておいてくれ』
「そんな隊長いきなり!」
『ああ明日が楽しみだ。嶋本の顔を見れるのは何ヶ月ぶりだろう・・・』
「ほっホンマにテレビ電話買って来るんですか!?」
『ああ。勿論だ。楽しみにしているぞ』
「はぁ・・・」
『それではまた明日、この時間に電話する』
「は、はぁ・・・」
『オヤスミ』
「あっ、おやすみなさい!」

   カチャ

  ツーツーツーツー

  マジですか!



【翌日】

 ピルルルル  ピルルルル

   来たっ!

   ゴクリ

    カチャ

あれ?画面真っ暗のままや。設定間違ったんやろか?つながったら映像もつながるはず・・・

「はい、嶋本です…」
『嶋か・・・』
「あっ、はい隊長、昨日ぶりです!ちゃんとテレビ電話買うて来て設置しましたよ!・・・けどすんません、俺設定間違うたみたいで、画面真っ暗のままで隊長の姿が映らへんのです。おっかしいなぁ〜」
どこで設定間違ったんやろ・・・
俺は買いたて設置したてホヤホヤのテレビ電話の使用説明書をペラペラとめくった。
『嶋・・・』
「はい、何すか?」
『・・・・・すまん』
「はい?何がっすか?」
『・・・嶋本のせいじゃないんだ。・・・映らなくて当然なんだ』
「??」
『俺も今日電器店へ買いに行ったのだが・・・』
「はい」
『テレビ電話はまだこちらの国では早すぎたようでどこにも売ってなかった・・・』
必死に店員に説明したのだがそんなもの見たことも聞いたこともないと門前払いを食らってしまった。

こちらはまだまだ発展途上国だという事を忘れていた・・・




おわり☆





オフライン本のネタの続きでごめんなさい。超一部の人しかわからないネタだよ。一応は本(昼間)のあらすじを入れてるので本を読まなくてもわかるかな、な流れにはしてみたのですが。

友達に本を渡して読んでもらったら、電話編の夜に隊長からかかってくる電話が気になる。楽しみにしてるよ。という嬉しい言葉をもらったので調子に乗って書いてみました。友からは夜だし、やっぱエロ電だよね!と言われ挑戦しようとはしたのですが、下品なエロになってしまったので挫折です。ギャグに逃げてしまいました。エロは読むのは好きですが、自分で書くとどうもオチを求めてしまうギャグ体質のようでなかなか難しいです。多分ギャグエロなら書けるんだろうな。





モドル