雪 NO.2 | |
「あぁ一言声かけて出ればよかったな。悪かった。コレを作ってたんだ」 と隊長が扉前のしゃがんでた所から立ち上がり、隊長が作ってた「コレ」を見せてくれた。 白くて丸い玉が二つたてに積み重なってるもの。 「雪だるま…?」 隊長が立ち上がった足元に高さ30センチくらいの小さな雪だるまがちょこんと二体並んでた。。 ちょうど基地の入り口で仲良く門番でもしとるかのような感じで。 「隊長が、作りはったんですか??」 −だから隊長が作ったって言っとるやん!何聞いとったんじゃ!− と、もう一人の俺が頭ん中で激しくツッコミ入れてきたけど、これは聞き直さずにはおれんやろ! だって隊長が何でこのクソ寒い中で雪だるまなんか作っとるねん! しかもこの雪だるま、かなりかわいいし。ちゃんと手も割り箸さして作ってるし、目も小石をマジックで塗っとるんか、黒いいびつな形のつぶらな瞳がはめこまれとる。 隊長と雪だるま、月とスッポン状態。そりゃ聞き直したくもなるっちゅーねん。 「久しぶりの雪だったからな。作ってみたくなってな。どうだ、なかなかの出来栄えだろ」 顔はいつものポーカフェイスのままやけど、声のトーンがいつもよりほんの少し、ホンマにほんの少しやけど高めの嬉しそうな声。 今まで一人で雪の中、せこせこと雪を集めて丸めて「目の位置はこのへんかな〜」っていろいろ考えながら雪だるま作っとったんやろな。しかも2体も。 隊長って意外と子供っぽい事好きやったんや。 新発見。 「どうだ、嶋本も一緒に作るか?」 「えっ!?俺もですか?」 いきなり誘われた。そして隊長は俺の返事を待つ事なく、雪降る中、また新たな雪だるま作りの為に雪集めを開始した。 「ちょっ、隊長!」 『まだ作るんですか!』 『寒いから嫌ですよ!』 『隊長もそろそろ中入りましょ!風邪ひいても知りませんよ』 と普段の俺なら間違いなくお断りしてる。けど、何やろ?この時は隊長の可愛い一面にやられてもたんやろか。 一緒に雪だるま作ってみたくなってもた。人の事子供っぽいなんてもう言われへんわ〜 「隊長!作るからには皆をビックリさしませんか!?」 「??」 「めっちゃよーさんの雪だるま作って、入口にダァーって並べましょーよ!入口出た途端雪だるまが大群でおったらみんな絶対ビビりますよ〜〜」 想像しただけで笑けてきた。俺ナイスアイディア! 隊長もその光景を想像してたのか暫く動きが止まった。そして、 「それはいい考えだな。やるからには何事も全力で行おう」 「嶋本、2階から器材のスコップとバケツを持ってこい!手で雪を集めるのは効率が悪い!それと雪だるまに刺す手の代わりの割り箸もだ!」 隊長がまるでレスキュー開始!なノリで俺に次々と指示を出してきた。 もうめっちゃノリノリや〜〜「何事も全力で」って雪だるま作りに全力注ぐ人おらへんで〜〜 俺も楽しくなってきて「分かりましたっ!」ってダッシュで2階に駈け上がりスコップとバケツを取って、1階のポット横の食器棚から割り箸をガバッとわしづかみで取って来た。 戻ってきたら既に雪だるまは新たに2体増えてた。これで4体。 それからは二人でさらにスピードアップ! 最終的にそれから30分足らずで30体。 単純計算、一人15体。2分で1体作った計算になる。 作り始めたらめっちゃ燃えてもたわ。 こんなに雪だるま作ったの初めてや。関西は雪があまり降らへんし、降っても積もる事がほとんどなかったから子供の頃ですら作った記憶は1、2度くらいしか。今日で一生分の雪だるまを作ったわ。 しかし、ちょっとこの景色は圧巻やで。っていうか異様? 雪だるま帝国に間違って足を踏み入れてもたって感じ?もしくは雪だるま帝国軍の逆襲? 1,2体なら可愛いですんだけど、こんだけおったら正直めちゃくちゃ怖いで! まあ他の隊員ビックリさすには十二分すぎる怖さやけど。 「隊長、やりましたね!」 「・・・ああ」 もう達成感で胸いっぱいなのか、雪だるまの大群の不気味さに我に返ってもたのか、 隊長はそれ以上言葉を発する事無くしばらく雪だるま達を見つめてた。 何考えてはるんやろ…ちょっとふざけすぎたかな。 「隊長、そろそろ中入りましょか。あったかいお茶入れますよ」 と声をかけてみた。このまま雪だるま見つめたままつっ立っとったら隊長が風邪引いてまうわ。 「そうだな」 「それじゃあ隊長先に中入っといてください。俺器材なおしてきますから。」 そう言って2階に持って上がる器材を屈んで手にとった時、 「シマ、楽しかったぞ」 と頭の上から隊長の声と同時に俺の頭をポンポンと撫でる手が降ってきた。 そして隊長は待機室に入っていかはった。 うわ〜〜隊長に頭撫でられた!しかも楽しかったって!それにシマって!俺の事シマって言ってくれたよ〜〜!!! 基地の中で暖房にあたってた時よりも、雪だるま作って必死に動いてた時よりも はるかに今のほうが体も顔も熱くなってもた。心臓もバクバクいってる。 きっと今の俺、顔真っ赤っかのはずや。 俺はダッシュで2階にあがり、器材をなおした。そして2階の隅の方で、心拍数が元に戻るよう必死に他のどうでもいい事を考えながら深呼吸をしまくって、顔の熱さも治まった頃合をみて待機室に戻った。 その後、暫くして 基地中に黒岩隊長の悲鳴(雄叫び?)が響き渡った。 どうやら車に書類を積もうと外に出たらしく、そこであの32体の雪だるまと鉢合わせたらしい。 しかも驚きのあまり腰ぬかしてもたって。 「こんなもん作ったの誰だぁ〜〜〜〜」 基地内に黒岩隊長の腰抜けた弱々しい声が響き渡った。 作戦大成功!! |
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